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きっかけは「プロジェクト活動」。社員が自ら考え実行する風土を醸成。

エプソンアヴァシス株式会社
代表取締役 武井 喬

更新日:2023年12月27日

1964年 長野県生まれ。
1987年 長野県内のメーカーへ入社。
1990年 エプソンコーワ株式会社(現:エプソンアヴァシス株式会社)入社。
2007年から2017年の間に、開発部門の事業部長や経営企画部長を歴任。
2018年 代表取締役 就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

プリンター需要の増加とともに急成長!エプソンアヴァシスの軌跡。

エプソンアヴァシスは、1980年「株式会社コーワコンピュータ」としてスタートしました。創業時は、酒販店やガソリンスタンド、会計事務所向け専用コンピュータの販売事業を手掛けていましたが、1990年ごろからセイコーエプソン社製プリンター関連のソフトウェア開発に参入。セイコーエプソン社の出資を受け、社名も「エプソンコーワ株式会社」へと変更した歴史があります。

私は1990年当時の社名変更の頃に入社しました。前職ではハードウェアエンジニアの経験があったものの、ソフトウェアはほとんど未知という状態での中途入社でした。

入社して最初に担当したのは、できあがったソフトウェアが正常に動くかどうかを調べる検査の仕事です。しかしこれが私には合っておらず、また転職しようかと考えていた矢先、当時の社長から「営業をやってみないか」と誘われました。そこからは営業担当として社長のそばで毎日行動を共にしました。

90年代はエプソンがインクジェットプリンターやプロジェクターといった主力製品を出し始めた時期で、ソフトウェア開発が活発に行われていました。その波に乗って当社の規模も拡大し、90年代前半は50名ほどだった社員数が、90年代後半にはおよそ280名まで増えました。

エプソンのグループ内でもソフトウェアを作れる人材が求められたため、2015年からはさらにセイコーエプソン株式会社の出資比率を高め、連結子会社としてより深くエプソン製品のソフトウェア開発を担っています。

業務を効率化して空いた時間に取り組む「SIP活動」を開始。

営業として育ててくれた初代社長が退任した2008年から10年間は開発部門の事業部長やスタッフ部門である経営企画部の部長を経験しました。幅広く社内の業務を渡り歩いた形です。そして2018年2月、突然「次はあなたに社長をやってほしい」と私に声がかかりました。就任は2カ月後の4月でしたからとても驚きましたね。

当時、エプソンの一員となったことで、今までと同じように指示通りにソフトウェアを開発するだけではグループの中で当社の存在価値を高めることは難しいと考えていました。一方で、ちょうど世の中の動きも変わってきていると感じていました。

そこで、何か新しいことを始めようと思い2019年から「SIP活動(Software Innovation Project)」を開始しました。これは新たな事業領域への挑戦として、「作る」から「創る」への発想転換を目的とした社内活動です。

SIP活動を開始して最初に作ったのは、AIや機械学習を専門とするチームです。また、社内全体に対して、今やっている業務を効率化して業務時間のうち15%をSIP活動に使えるようにしました。15%の中で新しいアイディアを考えたり、知識を身につけたい場合は勉強をしたり、個人の自由に使える時間です。

SIP活動にあわせて社屋をリノベーションし、社内外の人を招待し交流や学びができるスペースも整えました。まもなく4年目を迎えるこの活動ですが、最近ではいくつかサービス化できそうなアイディアも生まれています。

SIP活動で新しいサービスが生まれ、社員の活躍の場も広がった。

SIP活動から生まれたサービスの一つに、「コミュたす」というアプリがあります。これは消防団員として地域で活動する当社の社員が考案しました。消防団の活動時間の記録や集計は自治体関係者にとって大きな負担で、そこを何とか改善できないかというアイディアからアプリ化したものです。

また、AIの分野では、信州大学との共同研究にも力を入れています。このプロジェクトでは40代の社員が「ぜひ新しいことをやりたい」と手を挙げ、セキュリティ分野の論文を書いたり海外で学会発表を行ったりと、とても活躍しています。社員が好きなこと・得意なことを見つけて、その中で輝けるステージを用意できれば、活動の幅は世界にまで広がると気づかせてもらった出来事でした。

当社では年2回、「Advanced Value Up Fair」と題して社員が取り組んでいるSIP活動の成果を報告するイベントを実施しています。2022年度には、社内でビジネスコンテストも開催しました。「コミュたす」のようにしっかりと形になるまでは時間がかかりますが、活動を続けながら成功体験を積むことに意味があるので、徐々に社内に定着させながら発展を目指したいと思います。

様々な視点を持つ人材とともに、新しい価値を創造したい。

今まではソフトウェアのエンジニアのみ採用してきましたが、今後はもっと幅広い人材が必要になると考えています。研究をする人、アイディアを出す人など色々な視点が集まれば、より組織として成長できるからです。

これからはアントレプレナーシップを持った人材を積極的に採用し、「こんなことをやってみたい」と周囲を引っ張ってくれることを期待しています。当社独自のサービスはもちろんのこと、エプソン製品の開発においても起業家精神で当社の強みを最大限に引き出し、よりすばらしい価値を世の中に提供していく原動力になってくれる人材だと嬉しいですね。もちろん、そのためには、今以上に技術力を磨く必要もあると考えています。

社員の「やってみたい」を応援!挑戦の種を育て変革につなげる。

私が理想とする会社の風土は、社員が自ら考えて自ら動く状態をスタンダードにすることです。SIP活動を数年間続けてきた結果、私が代表に就任した当初と比べると「新しいことをやろう」「最新の情報を積極的に仕入れよう」という雰囲気はかなり定着しました。ただ、全員に同じマインドが浸透するにはまだ時間が必要なので、少しずつ輪を広げていきたいですね。

人は誰でも、心から「やってみたい」と思うことでないと継続が難しく、力を存分に発揮できません。そのためには指示を待つのではなく、自分たちで進む先や行動を決めて実践することが重要です。

私は社員のそんな熱意を大切にし、熱意がやがて形となって世の中に出ていけるように、ビジネスモデルや働く環境、人材育成をさらにアップデートしながらバックアップ体制を強化したいと思います。

編集後記

コンサルタント
児玉 珠美

オープンにご経歴をお話いただき、武井社長のお人柄の良さを肌で感じられたインタビューでした。常に会社の中心人物として、創業期から拡大期への変遷を見てきた武井社長が語る次の展望は、非常に興味深く感じました。

SIP活動は4年目を迎え、徐々に商品化できそうなアイディアが生まれていますが、SIP活動にかける想いは働く方の雰囲気やオフィス空間からも伝わってきました。

「ここは都内だろうか」と錯覚するほど洗練された空間は、社長自ら都内の企業へオフィス見学に行き、リノベーションしたとのことです。このオフィスで社員同士のコミュニケーションが自然と起こり、今日もこの空間で新規事業のアイディアが生まれるのだろうと想像すると、今後の同社の発展が楽しみでなりません。

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