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自動車用ホーンの生産を核に上田発のものづくりを世界に発信。

丸子警報器株式会社
代表取締役社長 塚田 圭一

更新日:2023年11月15日

1978年 長野県上田市生まれ。
2003年 東京の大学を卒業後、システム関連会社に就職。
2007年 上田市にUターンし、丸子警報器株式会社入社。
2015年 代表取締役就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

「想定外」だったUターンを経て、6代目社長に就任。

自動車用ホーンの専門メーカーである丸子警報器株式会社において、2015年から代表を務めています。当社は1949年に現会長の父が創業した70年以上の歴史を持つ会社であり、わたしで6代目になります。

もともとは戦時中、電熱器や船舶用のホーンを作る工場が上田に疎開してきたのがきっかけでした。それを創業者が受け継いで、自動車用のホーンを作る会社として立ち上げ、その後、私の祖父が代表を引き継ぎました。

私は上田で生まれ育ち、大学進学を機に上京しました。当時は自分の中に地元に残るという選択肢はまったくありませんでした。また、東京に出れば最先端のものに触れられるという憧れもあったんです。

大学卒業後はシステム関連会社に就職し、システムエンジニアとして勤務していました。その後、2007年、28歳のときに父の声かけで上田に戻り、父が代表を務めていた丸子警報器に入社しました。この地に戻ってきたのは、やはり自分が最終的に親の面倒を見なければという気持ちがあったからです。

入社当初、まわりは自分よりも年上の社員のほうが多かったのですが、地元ならではの温かさで気軽に話しかけてもらったこともあり、すぐに打ち解けることができました。最初は総務に、続いて営業に配属され、代表に就任するまで営業部長として複数の国内自動車メーカーへのアプローチを重ねていきました。

世界的自動車メーカーのTier1として深い信頼を勝ち取る。

当社は自動車のホーンの開発から生産までを一貫して行っており、高機能、多品種、低コストを基本とした研究開発を進めています。国内主要自動車メーカー各社との取引がありますが、なかでもトヨタ自動車様とは、Tier1(ティアワン)として半世紀近いお付き合いをさせていただいています。

製品の開発にあたっては、まずはお客様の設計担当者から仕様や要望についてじっくりお話を伺います。その上で、それらの要望を満たせるようなものを考えて提案していきます。ときにはお客様から難しい要望をお受けすることもありますが、できる限り対応するのが当社の基本姿勢です。このように長年にわたって様々な課題を乗り越えてきたからこそ、現在の当社があると思っています。

会社の生き残りをかけた効率化の促進とEV化への対応。

当社はほぼ専業でホーンを作っています。だからこそ、会社として生き残るためにも常に研究開発を積み重ね、徹底的に効率化を図り続けてきました。かつて当社では、ホーンの部品をほぼすべて手作業によって組み立てていました。そのため、どうしても多くの人手が必要であり、一時期は社内に300人から400人の社員がいたのです。しかし、現在ではそうした組み立て工程はほぼオートメーション化され、各ラインに1、2名の人員を割けばよいところまでこぎつけました。

けれども、完成したホーンに異音がないか確認する最終チェックだけは人の耳で行っています。なぜなら、そこでは数値としては表れないようなごく微妙な音色の確認が必要だからです。ホーンの音は交通安全を維持する上で欠かせないものであり、いわば人の命に直結します。だからこそ、異音が混じることのないよう徹底的にチェックをしています。

また、効率化の一つとしてホーン本体の軽量化にも取り組んできました。当社のホーンは世界規模でみても最軽量クラスでありながら、高い性能を担保しています。さらにこの分野においては多数の特許も取得しており、こうした積み重ねが国内トップシェアの地位の礎となっていると思います。

こうした効率化を陰で支えているのが、最先端の研究開発です。最近では地元の大学と連携して、シミュレーションソフトを活用した研究開発を積極的に進めています。これまでは研究開発のために、都度試作品を作りテストを積み重ねる必要がありました。しかし、いまではコンピューター上のシミュレーションによって最適化できるようになり、開発にかかるコストや時間をかなり削減できました。

これらに加えて、近年の自動車業界においては、EV(電気自動車)化が大きなキーワードとなっています。EVになってもホーンに求められる性能自体は変わりませんが、EV化に伴ういろいろな変化に対応する必要が生じてきています。

たとえば、EV化によってエンジンがモーターに変わると、車のボディーの構造も変わってきます。具体的には、エンジンは冷却のためにボディーに隙間が設けてありました。けれども、これがモーターに変わるとボディーの隙間がなくなり、従来よりもホーンの音が聞こえにくくなってしまうんですね。

さらに、ボディーの構造が変わることで、ホーンの搭載位置が従来より低くなることもあります。そのため、今よりも路面に近くなり、水がかかりやすくなってしまうといった問題が発生します。これらに加えて、ホーンの音を変えたり、音声化に対応したりするなど、今後も様々な変化に柔軟に対応していく必要があると考えています。

丸子ブランドのものづくりを生かした新たな事業を世界に向けて。

おかげさまで当社は、自動車のホーンに関しては国内でもトップクラスのシェアを取らせていただいています。けれども、決してこれに甘んじることなく、将来的には現在の事業と並行して新たな核となる事業を育てていきたいと考えています。

当社には、ホーン事業によって培われた材料に関する分析力やシミュレーション技術といった、高い技術力や研究開発能力があります。こうしたものづくりの底力を武器に、丸子ブランドにさらに幅を持たせて、 ホーンに続く新しいものを世界に向けて送り出したいという思いがあるのです。実は既に社内ではそのための研究開発も進んでおり、いくつか特許も申請しています。

また、自動車業界では今後、SDGsやカーボンニュートラルといった環境保全活動に業界全体で取り組む流れになっています。当社でもそれを受けて、2022年の12月に、会社の敷地内に太陽光発電のパネルを設置しました。現在、社内で使用する電力の約1割をこの太陽光でカバーできており、CO2排出量の削減などにも全社をあげて取り組んでいます。今後もこうした取り組みをさらに増やしていきたいと思っています。

加えて、この上田の地に本拠地を置く企業の一社として、地域を盛り上げていきたいと願っています。その活動の一つが、「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge」 への参加です。当社は2023年4月に地元長野で開催されたラリー大会に「丸子警報器ヴィッツ」として参戦し、クラス準優勝を果たすことができました。

わたしは現在40代ですが、この地域では、まだまだバリバリの若手扱いをされています。そんななかでも、近年では経営者の世代交代が進んでおり、30代、40代の若手経営者たちが頑張っています。こうした活動を皆さんにもっともっと知ってもらいたいですね。この地の未来のためにも、今後もこうした活動を通して「長野にもよい会社がいっぱいあるよ」ということを多くの若い人たちにアピールできればと思っています。

世界的な大企業に対し、自分の考えたものを提案できる醍醐味。

当社の魅力は、自動車用ホーンを通して、自動車開発における最先端のプロジェクトの一端を担えるという点にあります。つまり、世界的な規模の大手メーカーを相手に自分たちの考えたものを提案できる立場にあるんですね。ここには、ただ図面通りのものを作るだけの仕事では決して味わえない面白さがあります。

また、大きな会社だと部署や業務内容の区分けがはっきりしており、自分の担当以外の業務をする機会はあまりないと思います。一方で、当社にはそうした部署ごとの厳格な垣根がなく、状況によっては他の部門の手伝いをするなど、互いにひざを突き合わせながら連携し合う気風があります。

このように当社には、やる気次第で幅広いフィールドで活躍できるチャンスがたくさんあるので、それをスキルアップのモチベーションにしてほしいですね。

加えて、ホーンは交通安全などの観点からも、人の命を守るための重要なパーツです。さらに全社をあげてSDGsにも取り組んでいることから、仕事を通して社会貢献や環境保全をしたいという志のある方にも向いていると思います。

変化をポジティブに受け入れ、新しい視点で提案ができる人材を。

当社では、自動化できるところは徹底的に省力化を進める一方で、人がやるべき業務に関しては、しっかりと人を採用していく方針です。今後はEV化などをはじめ、自動車業界自体が大きく変化していくことでしょう。そうした激しい変化をネガティブに受けとめるのではなく、むしろにポジティブに受けとめ、楽しみながら柔軟に対応していける人材を求めています。

職種で言えば、特に求めているのは開発関係の人材です。既存のホーン事業だけでなく、今後の新事業における開発にも携わっていただきたいと思っています。また、今後自動化を進めるためにも、設計と設備関係の専門知識を持った方にもぜひ力をお借りしたいです。

なお、当社では近年、中途入社の方が多いのですが、それぞれが貴重な個性を持っていて、わが社に新しい発想や刺激を持ち込んでくれています。そうした我々にない視点から新しい発想や提案をしてくれる人は、今後の当社にとって非常に貴重な存在だと感じています。そうした提案がものになるかどうかは二の次として、まずは自分の頭で考えて、どんどん新しい提案をしていってほしいですね。

また、目先の自分の仕事だけでなく、常に好奇心のアンテナを張り、他部門にも首を突っ込んで発言していける方や、様々なニーズを持っているお客様に対して柔軟に対応できる方も大歓迎です。こんな私たちといっしょに新しいものを作り出したいという方を、ぜひお待ちしています。

編集後記

コンサルタント
山下 達也

今回の塚田社長のお話を伺って、ホーンという自動車には欠かせない部品の製造を通じ、自動車メーカーに対して製品の技術的な部分を直接提案できるという、Tier1ならではの面白さを強く感じました。

今日の自動車業界は電動化、自動化など100年に一度の変化の時期といわれており、ホーンという部品の必要性・重要性は変わらないものの、車の変化に伴って設計や仕様もまた変わってくるというお話を興味深く伺いました。今後の同社の事業展開についても楽しみにしながら、採用のご支援をしていきたいと思います。

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